パニック障害の辛さはなかなか人に伝わりにくい病気のひとつでもあります。その理由はパニック障害を発症している人でも、一見普通の人と変わりなく見えるからです。そんなパニック障害を発症した場合、会社への報告はどうすればよいのでしょうか。
今回はパニック障害を会社に報告するのか、さらにパニック障害が仕事に与える影響や上手にパニック障害と付き合いながら会社で働く方法などについてご紹介します。
パニック障害と会社への報告について
実際にパニック障害を発症した場合、会社への報告はどうすればよいのでしょうか。精神疾患に分類されるパニック障害はとても繊細な病気であり、なおかつ周りの人に理解されにくい病気でもあります。
報告するかどうかは状況や職場環境で大きく異なり、伝え方にも注意が必要です。パニック障害発症後でも会社で働き続ける場合と働き続けない場合、それぞれのケースを見ていきましょう。
会社で働き続ける場合
まずはパニック障害発症後も会社で働き続ける場合です。病状を伝える範囲や伝え方についてご紹介します。
上司にだけ報告する
まずは上司にだけ報告するケースです。以前よりは耳にすることも多くなり周知されつつあるパニック障害。しかしあなたの上司がパニック障害について知識が深いとは限りません。まだまだパニック障害についての理解は浅い場合が多いのです。
しかし会社で働き続けるのであればやはり一言、上司に報告しておいたほうが良いでしょう。万が一業務中にパニック発作がおきてしまった場合、上司が知らなかったという事態は避けるようにしておきましょう。
同僚にも伝える
可能であるならば一緒に仕事をする同僚にも伝えておきましょう。病状のどこまでを話しておくかはあなたと同僚の関係性にもよりますが、パニック障害による発作が起きたときの症状など、パニック障害における知識がない相手にもどのような病気であるかがある程度わかる様に伝えておきましょう。
そうすることでもし業務中やプレゼン中に発作が起きてしまった場合、対処してもらえる可能性があります。また業務内容や業務形態も配慮してもらえる可能性もあります。少しでも発作がおきにくい環境で業務を進めたいのであれば、上司や同僚の協力はなくてはならないものなのです。
会社で働き続ける自信がない
次にパニック障害を発症したときのことを考えると、とても会社で仕事を続けていく自信がないと考えている場合です。
誰にも知らせない
働き続ける意思がない場合は無理に話さなくても良いでしょう。退職や休職の際に理由を尋ねられることがあるでしょうけれど「一身上の都合」で構いません。パニック障害は当事者にとってはとても繊細な問題でもあり、つらい症状に悩まされ続ける病気です。
パニック障害に対する理解が進んでいない会社では「パニック障害は息苦しくなり手足が震える病気」程度の理解しかないことも多々あります。
つらい症状を説明し理解してもらうには膨大な労力を費やす必要があり、パニック障害を発症している状態ではあなたにかかる負担がとても大きいものとなってしまいます。
同じ職場で働き続ける意志がないのであれば、深くは話さず退職の挨拶と感謝は忘れずに退職へと動き出しましょう。
【結論】迷惑をかける前に報告を
パニック障害は業務中に発作を発症してしまえば会社や同僚にとても迷惑をかける結果となっていまいます。
しかし診断されたらすぐ報告するということではなく、自身が置かれている職場の環境や状態を見極めつつ、必要に応じて上司に報告するようにしましょう。
報告せず誰も何も知らないまま突然発作が起きてしまった場合、周りの人はとても驚き業務に支障をきたしかねないので注意が必要です。
パニック障害を報告したときのメリットとデメリット
パニック障害は精神疾患に分類されるため、会社や上司に報告するのはとても勇気がいることです。 では報告した場合どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
報告したときのメリット
まずはメリットについて見ていきましょう。
- 体調に配慮してもらえる
- リモートワークへと切り替えてもらえる
- 出勤時間帯を配慮してもらえる
- 部署異動や配置換えを検討してもらえる
パニック障害に理解があり協力的な会社であればこのような配慮をしてもらえるでしょう。満員電車や人の密集などを苦手とするパニック障害は、リモートワークへの切り替えや種菌時間帯の調整をしてもらえると精神的にもとても救われる状態となります。
理解が進んでいる会社に属しているのであれば、まずは人事や上司に相談してみてはいかがでしょうか。
報告したときのデメリット
パニック障害を報告するということはメリットばかりではありません。次は報告したことで起こりうるデメリットについてご紹介します。
- 希望する業務から異動させられる
- 昇進への影響
- 偏見の目で見られる可能性
いつどのような条件下で発作が起きるのかがわからないパニック障害は、ともに働く同僚はとても気を遣う状況となってしまいます。本人もいつ発作が起きるのか、ハラハラしながら日々の業務に就かなければならないのです。
周りに迷惑をかけないようにとパニック障害を報告した場合、上記のようなデメリットも被る可能性があります。いつ発作が起きるかわからない状態であるばかりに希望する業務を外されてしまうということも起こるのです。
また精神疾患ということで周りから偏見の目で見られたり、昇進に悪影響を与える可能性も考えられます。会社に報告する際は上記のようなデメリットも十分に理解しておくようにしましょう。
パニック発作のきっかけになりやすい要因
発作が起きてしまう条件が決まっているわけではないパニック障害。しかしきっかけとなりうる業務や環境があります。どのような事がきっかけになるかを知っておくと発作が起きないように気をつけることができるので見ていきましょう。
きっかけになりやすい業務内容
まずはきっかけになりやすい業務内容についてです。
- 過剰なノルマやクレーム処理
- ハードな環境での業務
- 強いストレスを感じる業務
- 大勢の前で発表・プレゼン
業務内容については主に強いストレスを感じることを避けられると、少し発作が起きる頻度を少なくすることができる可能性があります。
過剰なノルマやハードは環境下での業務、サービス残業や対価のない休日出勤、上司からのパワハラなどもしかしたら日常的に起きていることなのかもしれません。しかしこれらはパニック障害を発症している人にとってはとても強い要因となって発作へとつながるのです。
上司や人事部に相談できることはそのように対処し、難しそうであれば労働局にある総合労働相談コーナーに相談してみましょう。
きっかけになりやすい環境
きっかけとなりやすいのは業務内容ばかりではありません。職場環境や通勤環境がきっかけとなってしまう場合があります。
- 満員電車で通勤
- 閉鎖的な配置化での業務
- 人が密集したエレベーター内
パニック発作が起きてしまう条件は決まっていません。特に誘因なく急に発作が起きてしまうことも多々あります。そんな中でも人が密集した場所や閉鎖的な場所は比較的、発作が起きやすいとされているのです。
少しでも発作を起こす頻度が減らせるようにこれらの場所を避けるようにできると良いでしょう。
パニック障害で仕事がツラくなったら我慢しないで
パニック障害が起きてしまった場合、我慢しないで下さい。我慢して症状を受け入れずごまかしながら働き続けてしまうと、いつかきっと限界が来てしまいます。
あなた心と身体を最優先にしてください。たとえ今の職を離れたとしても、その先がないわけではありません。
パニック障害になったあなたをサポートしてくれる制度が今は充実しています。
病院を受診
まずは病院を受診しましょう。
受診することであなたの現在の状況をしっかりと把握することができます。
発作が起きてしまったことや精神疾患という事実を受け入れたくないという思いから、病院受診を先延ばしするケースは多くあります。
受診することであなたの未来がなくなるわけではないのです。現実を受け入れるのはつらいことかもしれませんが、あなたが壊れてしまう前にしっかりと診てもらうことをおすすめします。
必要に応じて治療を受ける
あなたの状態に応じた治療を受けましょう。
パニック障害には様々な治療法がありますが、あなたの症状に適した治療法を提示してもらえます。
治療を進めるには本人をはじめ家族や周囲の人たちの病気に対する理解と協力がとても重要となります。
治療が不適切な場合や十分な治療を受けられなかった場合に、うつ病など他の病気になってしまう可能性も十分に考えられます。そうならないためにも早めの受診と適切な治療を受けることがたいせつなのです。
自分の心を大切に
パニック障害になる人は責任感が強く真面目な人が多いのが特徴です。そういった性格であるために、パニック障害になってしまっても周りや会社のことを考え、優先しすぎて自分の事を後回しにしすぎてしまうのです。
パニック障害と診断されたら、なるべく自分の体調と心の状態のことを優先して考えてください。今後の快復に向けてもこれはとても大切なことです。
他の選択肢も視野に
同じ職場で働き続けることを選択しなかった場合、他の選択肢を視野に考える必要があります。具体的にどのような選択肢があるのか見ていきましょう。
休職
まずは休職という選択肢です。すぐに退職という選択ができない場合に用いられることが多いです。
パニック障害においての休職期間は様々ですが、一般的には3ヶ月〜6ヶ月が多いようです。
パニック障害は一見良くなった様にみられても、また繰り返し再発することが多々あります。仕事に行くことが困難である場合は一度休職し、病院へ通いながら治療に専念する期間を持ちましょう。
転職
職場自体に要因や発作のきっかけがあることが明らかな場合は転職を検討しても良いかもしれません。異動や配置換えで改善される場合は良いのですが、そういった対処でも改善されない場合はその職場を離れてみましょう。
精神障害者保健福祉手帳を持っていれば障害者雇用枠での転職が可能となります。障害者雇用枠は予めパニック障害に理解がある企業に就職できるため、突然の発作などや働き方にも配慮してもらえるので安心して転職することができます。
退職
パニック障害による発作が度々起きるようになると、やはり同じ職場で働き続けることは少し難しいと感じることがあるかもしれません。もちろんパニック障害を理由に退職することは可能です。
パニック障害を理由に退職した場合でも、失業保険や傷病手当といった支援制度を利用することは可能です。退職後の制度が充実しているので、パニック障害を抱えながら働くことがあまりにツラい場合には退職という選択肢を検討してみることをおすすめします。
パニック障害でも利用できる支援制度
ではパニック障害で退職した場合でも退職後に利用できる支援機関や支援制度について見ていきましょう。
パニック障害と失業保険
まずは失業保険です。失業保険を受給するには条件がありますが、パニック障害が理由で退職した場合は「特定理由離職者」に認定され給付制限期間がない状態で給付を受けることが可能となります。
失業保険についての詳細はこちらでご紹介しています。
パニック障害でも利用できる支援機関
パニック障害を理由に退職した場合でも治療を進めながら社会復帰を果たすためにサポートしてくれる支援機関があります。パニック障害と診断されたとしても自分のペースに合わせて社会復帰することは十分に可能なので活用してみてください。
- ハローワーク
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
各支援機関についての詳細はこちらでご紹介しています。
パニック障害でも利用できる支援制度
支援機関と併せて支援制度も充実しています。パニック障害を抱えていても安心して生活していけるようにサポートしてもらえるのでぜひ参考にして活用してみてください。
- 障害者手帳
- 障害年金
- 生活保護
- 傷病手当金
- 自立支援医療制度
各支援制度についての詳細はこちらでご紹介しています。
まとめ
いかがでしたか?
今回はパニック障害と診断されたときに会社や上司への報告はどうしたらいいのかという点についてご紹介してきました。
パニック障害と診断されたとしても、引き続き同じ職場で働き続ける場合、新しい道を選択する場合など置かれている状況によって対応は変わってきます。
周りのことを考えすぎて無理をした結果、あなたが壊れてしまったとしてもあなたの同僚や会社はあなたのことを一生面倒見てくれるわけではありません。
まずは会社の対応や支援制度など様々な事を検討し、あなたにとって最善の道を選ぶようにしましょう。
この記事が今現在悩んでいる少しでも多くの方の参考になれば幸いです。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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